うちに遊びに来た近所に住む甥っ子から聞いた話。
最近、自転車通学する男子高校生の間で、ちょっとした都市伝説があるらしい。
うん?
それ、もしかしたら、僕のことかもしれない。
もちろん本人に追いかけているつもりはない。
ただ、ログアドベンチャーeで、静かに巡航しているだけなのだが、どうやら前を走る高校生たちからすると、なかなかに怖い存在らしい。
これは、そんな通勤路の日常の話である。
朝の通学路の怪異
朝の通勤路。
信号が青になると、高校生たちは競い合うようにダンシングで加速する。
ふ、若い。
こちらはというと、ログアドベンチャーeに、柔らかスプリングのテリーサドルとサス付きステムを組み合わせた、ジジイ向けコンフォート仕様。
心拍数を一定に保ちながら、静かに巡航している。
若さで走る彼らと競争する気はまったくない。
ただ、不思議と巡航帯が重なる。
速くないのに、なぜか離れない
最近、ログアドのタイヤを標準のCSTからシュワルベ・マラソンへ交換した。
これが驚くほど転がる。
以前は、片道7kmの通勤をエコモードでギリギリ一週間持つ感じだったバッテリーが、今では標準モードでも余裕があるくらいに転がる。
でも、全力ダッシュで力を使い果たし、徐々に失速しはじめる高校生たちに、こちらはシッティングのまま、じわじわ追いついてしまう。
いや、僕が君らを追っているわけじゃない。君らと僕の巡航帯が重なり始めただけだ。
「なんで離れないんだ……」
以前、20mくらい前を走っていた高校生が、こちらを振り返りながら電柱へハンドルをぶつけ、宙返りして転倒したことがあった。
心配して駆け寄ると、本人は「大丈夫っす」と言っていたが、もしかしたら以前に、少しプレッシャーを与えてしまったのかもしれない。
それ以来、こちらも距離を取るようにしている。
先行者の5mくらい後ろを、一定速度で巡航する。
でも、巡航速度が近いと、こちらは無理して抜く気がないので、結果として後ろを走り続けることになる。
すると相手は、何度も振り返る。お店のガラス越しに、後ろを確認したりする。こちらはヘルメットを目深にかぶり、相手の後輪だけを見ながら、一定距離を保って走る。
前を走る側からすれば、確かにホラーかもしれない。
しかも高校生側からすると、
おじさんのチャリなんて、すぐ引き離せるだろ
と思って抜いたはずなのに、なぜか離れない。しかも、おじさんは全く息が切れていない。
結果として、
なんでこのおじさん、ずっと後ろにいるんだ……
となるらしい。
気づけば、通学路の都市伝説である。
巡航思想
でも、こちらには理由がある。
- もう選ばない走り方
-
本気ダッシュ。全力坂。
- 今の走り方
-
一定出力で静かに加速し、自分が気持ちよく走れる速度で巡航する。無理に踏み込まない。息を切らさない。ゆっくりと加速し続ける。
その結果、全力で加速と減速を繰り返す高校生たちの後ろへ、じわじわ追いついてしまう。本人は、ただ自分のペースで気持ちよく走っているだけなのだが、静かに「ひたひた」と迫られる側からすれば、まあ怖いのかもしれない。
でも、今の自分にとって大事なのは、瞬間的な速さではない。
無理をせず、一定の負荷で長く走り続けることだ。
高価で派手なロードより、廉価でもタフで、もし壊れてもすぐ直せて、どこまでも走り続けられる機体のほうが好きなのも、たぶん同じ理由だと思う。
若い頃みたいに、無理して踏み込むことはもうしない。
今日も片道7キロの通勤路を、一定出力で静かに巡航している。
本人は体調維持のつもりだが、高校生たちの間では、これからもしばらく都市伝説のままだと思う。
