プロンプト制作とビジネス応用
「生成AIパスポート(2026年版シラバス対応)」の流れの中で、第5章はこういう位置づけです。
- これまで:AIの基礎、生成AIの仕組み、活用技術、リスクと法規制
- ここから:AIを実務でどう使いこなし、成果につなげるか
つまり第5章は、知識を“道具の扱い方”に変える章。
プロンプト(AIへの指示文)を工夫し、仕事の質とスピードを上げる考え方を学びます。
1) プロンプトの背景にある考え方
AIから良い答えを引き出すには「指示の設計」が必要
生成AIは、ただ質問するとそれっぽく答えてくれます。
でも、実務で使うときに重要なのは「それっぽい」ではなく、目的に合った形で、安定して出力させること。
そのために、AIの特性に合わせた指示(プロンプト)が必要になります。
LMとLLMの違い
- LM(言語モデル):言葉のつながりを学び、次の言葉を予測するモデル
- LLM(大規模言語モデル):データ量と規模が大きく、文脈の把握や多様なタスクに対応しやすいモデル
LLMになったことで、「会話の流れ」「役割」「条件」などを含む、より複雑な指示が効きやすくなりました。
出力の“性格”を調整するパラメータ
同じ質問でも、出力の雰囲気を変えられます。
- Temperature(温度):発想の飛びやすさ
- 低め:堅め、ブレにくい(正確性重視)
- 高め:多様、意外性が出る(アイデア出し向き)
- Top-p:選ぶ言葉の範囲をどこまで広げるか
- 絞る:安定しやすい
- 広げる:バリエーションが出やすい
要するに、「正確にまとめて」なのか「幅広く案を出して」なのかで、AIの出力モードを切り替えるという話です。
2) 良いプロンプトを作る「4つの要素」
目的の成果物を作るための“設計図”
質の高い出力を安定して得るために、第5章ではプロンプトを次の4要素で組み立てる方法が推奨されています。
- Instruction(指示)
- AIにやってほしいこと(要約、翻訳、比較、提案、校正など)
- Context(背景・条件)
- 前提、目的、想定読者、役割
- 例:「あなたはプロの編集者」「社内向けに」「結論先出しで」など
- Input Data(入力データ)
- AIに処理してほしい本文、メモ、箇条書き、資料内容
- Output Indicator(出力形式)
- 例:「箇条書きで」「表にして」「300字程度」「見出し付き」など
この4つを揃えるほど、AIは迷いにくくなります。
逆に、出力がズレるときは「どれかが足りない」ことが多いです。
Zero-shotとFew-shot
- Zero-shot:例を見せずに指示する(いきなり本番)
- Few-shot:短いお手本(例)をいくつか見せてからやらせる
「文体を寄せたい」「分類の基準を揃えたい」「複雑な形式で出したい」などのときは、Few-shotが効きやすい。
AIにとって“見本”は、言葉より強い道しるべになります。
3) 実務での使いどころ
AIを「検索」ではなく「共同作業の相棒」にする
第5章では、使い道を広く押さえています。代表的にはこういう領域。
- 文書作成・整理
- メール作成、要約、箇条書き↔文章変換、推敲・校正
- 企画・調査
- ブレスト、キャッチコピー案、アンケート設計、自由記述の分類・分析
- プロジェクト管理
- アジェンダ作成、手順の分解、タスク抽出、抜け漏れチェック
- 意思決定支援
- 賛成/反対の論点を出させる
- あえてAIに質問させて、考えを深掘りする
ここでのコツは、AIに「答え」を求めるより、
“途中工程”を任せて、人間の判断を助ける使い方に寄せること。
仕事が速くなるだけじゃなく、考えの抜けも減ります。
4) 失敗しないために「AIの不得意」を知っておく
得意なことに使うほど、成果が安定する
この章は「万能ではない」という前提もはっきり押さえます。主な注意点は次の3つ。
- 計算が苦手
LLMは計算機というより「言葉の流れを予測する仕組み」なので、複雑な計算はミスが出やすい。
→ 計算は表計算ソフト等に任せ、AIには手順の説明や検算観点を出させるのが安全。 - 文字数の厳密指定が苦手
AIは内部で文字ではなく“トークン”という単位で扱うため、ぴったり何文字はズレやすい。
→ 目安を指定し、最終調整は人間が仕上げる。 - 最新情報を自動で知っているとは限らない
学習データの範囲(知識のカットオフ)以降の出来事は、前提として持っていない場合がある。
→ 最新性が重要な内容は、根拠の提示や参照資料の確認が必須。
まとめ:第5章が教えるのは「レシピ」と「火加減」
第5章の要点を一言で言うとこう。
生成AIは高性能な道具。成果は、指示(レシピ)と調整(火加減)で決まる。
- プロンプトは「お願い」ではなく「設計」
- 4要素で組み立てると、出力が安定する
- 実務では“途中工程の相棒”として使うと強い
- 苦手分野(計算・厳密文字数・最新性)を避けると事故が減る

