AIの歴史をどう捉えるか
―― 3つのブームから見える「知能の与え方」の変化 ――
はじめに
人工知能(AI)は、近年になって突然現れた技術のように語られることがありますが、その背景には長い研究の積み重ねがあります。
公式テキストでは、AIの発展の流れを理解するための整理として、「三度のAIブーム」という区分が紹介されています。
この区分は、単に技術が新しくなった順番を示すものというよりも、「知能をどのように機械に持たせようとしてきたのか」という発想の変化を振り返るための見取り図として捉えると理解しやすくなります。
本記事では、三つのブームを時系列で追いながら、それぞれの時代でどのような考え方が採られていたのか、試験に出るキーワードを交えて整理していきます。
なぜ「3つのブーム」で整理されているのか
AIの研究は一直線に進歩してきたわけではなく、「期待が高まる時期」と「技術的な制約が意識される時期」を繰り返してきました。
その流れを振り返る際に、「第一次」「第二次」「第三次」というブームの区分が用いられます。
第一次AIブーム:探索と推論という発想
時期の整理
第一次AIブームは、1956年のダートマス会議を起点として、1970年代後半頃まで続いた時期です。
この会議で「人工知能(Artificial Intelligence)」という言葉が用いられ、研究分野としてのAIが意識されるようになりました。
当時の中心的な考え方
この時代の研究では、主に「推論」と「探索」が焦点となりました。試験対策として以下の定義を押さえておきましょう。
- 探索:問題を解決するために、可能な解の空間を探すプロセス。
- 推論:与えられた事実とルールを使用して、新しい事実を導き出すプロセス。
つまり、迷路やパズルのようにルールが明確な問題に対して、人間のように論理的に答えを導き出すことを目指しました。
技術的特徴と限界
このアプローチは、特定の問題(トイ・プロブレム)では成果を上げましたが、現実世界のように複雑で曖昧な状況を扱うには限界がありました。
その結果、1970年代後半には研究への期待が急速に冷え込み、ブームは一区切りを迎えました。
第二次AIブーム:エキスパートシステムの試み
時代背景
1980年代後半から1990年代初頭にかけて、計算機性能の向上を背景に、AIは再び注目されるようになります。これが第二次AIブームです。
エキスパートシステムという考え方
この時代の主役は「エキスパートシステム」です。
これは、特定分野の専門家(医師や熟練工など)の知識をコンピュータに取り込み、専門家のように振る舞わせるシステムです。
公式テキストでは、このシステムが以下の要素で知識を取り込んでいたと説明されています。
- 知識ベース:専門家の知識をルールとして蓄積したもの。
- 推論エンジン:知識ベースを使って答えを導き出す仕組み。
医療診断支援や工場の故障予測など、対象を限定した領域では実用的な成果が報告されました。
再び訪れた「AIの冬」
しかし、このシステムには大きな課題がありました。
- 専門家の知識を正確にルール化(入力)するのが難しい。
- ルールが増えすぎて矛盾が生じたり、管理が困難になったりする。
これらの限界から、多くのプロジェクトが実用化に至らず、再び研究が停滞する「AIの冬」と呼ばれる時代が訪れました。
第三次AIブーム:データから学ぶという転換
現在につながるブーム
2010年代以降に広がり、現在まで続いているのが第三次AIブームです。
このブームを引き起こした主な要因は、以下の2点であるとテキストで強調されています。
- ビッグデータの活用(膨大なデータを扱えるようになった)
- ディープラーニング技術の発展(機械学習の精度が飛躍的に向上した)
発想の転換点
第三次ブームの最大の特徴は、「人間がルールを教え込む(第二次)」のではなく、「大量のデータからAI自身が特徴やパターンを学習する」という点にあります。
これにより、画像認識や翻訳など、従来のルールベースでは不可能だった高度なタスクが可能になりました。
まとめ:3つのブームを一つの流れとして見る
AIの歴史は、次のように整理できます。
| 時期 | キーワード | 特徴 |
|---|---|---|
| 第一次 (1950s-) |
探索と推論 | 迷路やパズルは解けるが、現実は解けない。 |
| 第二次 (1980s-) |
エキスパートシステム 知識ベース |
専門家の知識を入れたが、管理が限界に達し「AIの冬」へ。 |
| 第三次 (2010s-) |
ビッグデータ ディープラーニング |
データから自律的に学習し、実用化が進む。 |
これらは「どれが正しかったか」を判断するための区分というより、「知能をどう捉え、どう実装しようとしてきたのか」という試行錯誤の歴史です。
「なぜ前のブームが終わったのか(冬が来たのか)」という理由とセットで覚えておくと、試験でもスムーズに解答できるはずです。

